ご自身のメインバンクがどんな分野に融資を行っているのかを知っておくことは、とっても大事です。

目次

  1. SDGsになぜ銀行が重要なのか
  2. 未来に投資する銀行を選ぼう
  3. メガバンクの融資姿勢
  4. まとめ

SDGsになぜ銀行が重要なのか

”電力会社を選ぶ事は未来を選ぶこと”でご紹介した再生可能エネルギーへの転換や、船や飛行機といった自動車以外の二酸化炭素を排出する乗り物や機械の脱炭素化、製造時に大量の二酸化炭素を排出する鉄鋼業や化学工業、機械製造業などの重化学工業の製造設備の改修など、脱炭素社会の実現には非常に多くの資金が必要になります。

持続可能な社会を構築するために必要な投資額は世界全体で8,000兆円必要とも試算(IEA)されいます。途方もない金額ですがこの資金の調達は民間投資の拡大なくしては達成できるものではなく、私たちの給与や報酬が振り込まれる銀行からの投資も非常に大きな役割を担うことになります。

未来に投資する銀行を選ぼう

日本のESG投資額(環境・社会・ガバナンスに配慮した企業を選別して行う投資)は2020年末時点で約300兆円(経済産業省)となりましたが、世界全体のESG投資額の割合を地域別に見ていくと、アメリカ48%、ヨーロッパ34%、日本8%、カナダ7%(2020年)でGDPが日本の半分に満たないカナダとほぼ同水準です。これは少ないと言わざるを得ません。

ESG投資額を増価させ、脱炭素社会の実現や、人権や公平な取引の実現に取り組む企業が必要な資金を獲得できる状態とするために私たちは、ESG投資を実践しSDGsに沿った経営を行う銀行を選択し、その銀行をメインバンクとするなどの具体的な行動を起こしていく必要があります。

メガバンクの融資姿勢

日本のメガバンク3行の公表している資料や環境関連NGOの調査資料から、ESG投資の一つであるグリーンファイナンス※への各行の実績をA+からC-の6段階で評価しランキングました。評価ポイントは以下の2点のみとし、方針ではなく実績を重視する事といたします。

評価ポイント

  1. 2020年のグリーンファイナンスに対する実績
  2. 2020年の化石燃料産業に対する融資・引受実績

※グリーンファイナンス:ESG投資の1つ。再生可能エネルギー、エネルギー効率改善など気候変動の適応・緩和に資する事業への投資・融資等

3位 三菱UFJフィナンシャル・グループ

引用元:https://www.mufg.jp/dam/ir/report/disclosure/pdf/ir2021_all_ja.pdf

評価:C-

MUFGグループのグリーンファイナンス評価はC-としランキングは3位としました。貸出残高がメガバンク中最も高いのですが、2020年度のグリーンファイナンス投資額は最も低いこと、更にパリ協定以降の化石燃料へのファイナンス額は最も高く、世界的に見ても上位にランクしているため最下位となりました。

○2020年のグリーンファイナンス実績 C+

MUFGグループの2020年度のグリーンファイナンス額は1.3兆円です。2021年3月末時点の貸出金残高は107.2兆円となっており、 グリーンファイナンス に対する割合は1.2%で非常に低いです。MUFGグループでは2030年までにグリーンファイナンス累計額18兆円を目指していますが、メガバンク中最も貸出金残高が高いにもかかわらず2番目の貸出金目標となっています。

○2020年の化石燃料産業に対する融資・引受実績 C-

レインフォレスト・アクション・ネットワークによるとMUFGグループの2020年化石燃料へのファイナンス(投資・引受額)額は約3兆円(290億ドル)で、グリーンファイナンス額の倍以上となっています。パリ協定締結後の化石燃料へのファイナンス額では世界で第6位となっており、サスティナビリティー社会の構築に逆行する銀行として糾弾されています。

グリーンファイナンスの分野ではかなり遅れており、危険とさえ感じるMUFGグループですが、2021年統合報告書では、サスティナビリティーに関して10ページ以上が割かれており今後の活動には期待が持てます。これらの計画や目標がどのように実現されていくか、当サイトで随時報告していきたいと思います。

2位 三井住友フィナンシャルグループ

引用元:https://www.smfg.co.jp/investor/financial/disclosure/fy2020_f01_pdf/fy2020_f01_00.pdf

評価: C-

SMBCグループのグリーンファイナンス評価はC-としランキングは2位としました。グリーン投資額はメガバンク中最も高いのですが、化石燃料産業への投資抑制姿勢が弱く グリーンファイナンス 額を上回っており、持続可能な社会・産業の発展に寄与するどころかそれを妨げかねない活動を行っていると判断しランキングは2位としました。

○2020年のグリーンファイナンス実績 B-

グループ全体の2020年グリーンファイナンス実績は2.7兆円で最も高いです。2021年3月末時点の貸出金残高は81.9兆円となっており、割合としては3.3%弱です。SMBCグループは2030年までにグリーンファイナンス実行額20兆円を目標としており、年間3兆円規模の融資・引受額は計画を上回る額ではありますが、貸出金残高割合を考えれば更なる野心的なグリーンファイナンスへの転換を願いたいところです。

○2020年の化石燃料産業に対する 融資・引受 実績 C-

レインフォレスト・アクション・ネットワークの調査によるとSMBCグループの2020年の化石燃料へのファイナンス額は約2.9兆円(280億ドル)となり、グリーンファイナンス額を上回ります。SMBCグループは2040年を目途に石炭火力発電所向けの貸出金ゼロにする目標を2020年7月に掲げましたが、これは非常に消極的な目標で、最低限達成しなければ現在よりさらに大規模な気候変動が訪れるとされるパリ協定の水準を達成するためには、2030年までには石炭火力発電所の「運転」をゼロにすることが求められています。

また、SMBCグループは前述のような目標を2020年7月に掲げたにもかかわらず、2020年末にベトナムの石炭火力発電事業への融資契約を締結しており、SDGsウォッシュと言われかねない行動を取っています。また、パリ協定以降の化石燃料へのファイナンス額は世界で18位となっており、早急な化石燃料へのファイナンスへの融資中止が求められます。

SMBCグループには、メガバンクとしての責任を再確認いただき、短期的な収益に固執することなく銀行家としての正しい判断によって未来につながる投資を拡大し、環境破壊につながる融資を停止するよう願います。

1位 みずほフィナンシャルグループ

引用元:https://www.mizuho-fg.co.jp/investors/financial/disclosure/data21d/pdf/main_all.pdf

評価:C+

みずほファイナンシャルグループのグリーンファイナンス評価はC+としランキング1位となりました。メガバンクの中で唯一化石燃料へのファイナンス額がグリーンファイナンスの額を下回った点を評価しC+とさせていただき、メガバンク3行では最も良い評価となりました。しかし、グリーンファイナンス目標額はメガバンク中最も低く、融資枠の拡大が求められます。また、システムの不具合も続いており利用に不安がある点は大きな問題です。利用者の信頼は銀行として最も大切な要素の1つですので、早急な改善が求められます。

○2020年のグリーンファイナンス実績 B-

みずほグループの2020年度のグリーンファイナンス融資額は2.6兆円です。2021年3月末時点の貸出金残高は83.7兆円となっており、グリーンファイナンスに対する割合は3.1%です。みずほグループは2030年までにグリーンファイナンス融資額を12兆円としており、メガバンク3行の中では最も低い数値であり物足りないを言わざるを得ませんが、2020年度の実績ではSMBCグループに次ぐ融資を実施していることを考慮しB-としました。

○2020年の化石燃料産業に対する 融資・引受 実績 C+

レインフォレスト・アクション・ネットワークによるとみずほグループの2020年化石燃料へのファイナンス額は約2.4兆円(228億ドル)で、グリーンファイナンス融資額を下回っています。しかし一方では、2016年から2020年の化石燃料へのファイナンス額は世界で第8位です。これらの良い面と悪い面を総合的に評価し、C+とさせていただきました。

みずほグループは、2021年統合報告書の中で石油・ガス、石炭火力発電、石炭採掘、パームオイル、木材・紙パルプ等を取り扱う事業者との環境問題解決に対する建設的な対話を強化していく方針を打ち出し、これらのセクターへの環境・社会に配慮した業態への移行リスクに対してサポートを強化する方針を打ち出しました。これはメガバンク3行の中で唯一の宣言で、環境NGO3団体(国際環境NGO 350.org、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、気候ネットワーク)からも評価されています。これらのコミットに対してみずほグループがどのように実施していくのか、引き続きウォッチしていきたいと思います。

まとめ

今回はSDGsと融資の関係からメガバンクのグリーンファイナンスについて見ていきました。この度の調査結果からは、メガバンク3行はSDGsに貢献するよりも逆行している傾向が強いことが浮かび上がってきました。

冒頭で申し上げました通り、SDGsの達成には莫大な資金が必要となります。その資金が持続可能な社会のためのイノベーションや開発のシーズに運用されるためには、資金の供給元である銀行や機関投資家がSDGsをビジネスチャンスととらえ、参画してもらうことが不可欠です。

SDGsがこれまでの人権や環境に対する目標と異なる点は、民間企業を巻き込むことを宣言に明記している点です。持続可能な開発のための2030アジェンダには民間セクターや民間資金、投資という文言が複数回記載されています。
MDGs※の経験から資金力のある民間企業を巻き込み、投資を促進しなければ目標は達成できないと考えたためです。

そのために私たちができる事は、持続可能な開発に投資し促進する銀行に資金を預け、化石燃料への投資などSDGsに逆行する銀行から資金を引き上げることで持続可能な開発に投資する銀行の資金力を強化することです。

一人一人の行動は銀行にとっては小さなものかもしれません。しかし、その数が多くなれば必ず無視できなくなってきます。実際今回見てきましたように、各行ともグリーンファイナンスに転換していかなければ今後の銀行経営が厳しくなることに留意した方針を掲げ始めています。この流れを加速させるためにもこれからの各行の行動と経営方針に注目し、どの銀行に私たちの資産を預けることが未来のためになるのかこのサイトでお伝えしていきたいと考えています。

残念ながら今回の当サイトの検証では、メガバンクをメインバンクとしない方がSDGs推進のためには良い可能性が高いという結果が出てしまいました。この結果は個人的にもショックでした。ニュースを見ていると各行は近年ESG投資枠の拡大や化石燃料産業への融資撤退を宣言し、真剣に取り組んでいるように感じていた為です。しかしながら実際は世界でも上位にランキングされるほどの金額を化石燃料産業に融資し続けていたのです。ニュースの良い部分だけを見ていたのでは真実は把握できないと痛感したこの度の調査でした。私は長年SMBCをメインバンクとしていましたが、この度の調査結果を受けて他行に切り替えることを決意いたしました。

次回の記事では、SDGsに貢献できる銀行をお伝えする予定です。

※MDGs:ミレニアム開発目標。2015年を達成年度とした国際社会共通の目標。MDGsの未達成目標や問題点を考慮してSDGsは作られました。

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参考サイト

経済産業省 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 令和2年12月版
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012-1.pdf(参照 2021-08-29)

「化石燃料ファイナンス成績表 2021〜気候カオスをもたらす銀行業務〜レインフォレスト・アクション・ネットワーク
http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2021/03/JPN_BOCC-2021_Executive-Summary.pdf(参照 2021-08-29)

350 Japan 【共同プレスリリース】39カ国の128団体が日本の官民にブンアン2石炭火力からの撤退を要求 – 350 Japan
https://world.350.org/ja/press-release/200125/(参照 2021-08-30)

【プレスリリース】日本のメガバンク3行の気候関連ポリシー比較を公表 総合評価ではみずほがトップ(2021年6月21日)
https://www.kikonet.org/press-release/2021-06-21/3-megabank-comparisonhttps://www.kikonet.org/press-release/2021-06-21/3-megabank-comparison(参照 2021-08-30)

三菱UFJフィナンシャル・グループ
https://www.mufg.jp/index.html(参照 2021-08-30)

三井住友フィナンシャルグループ
https://www.smfg.co.jp/(参照 2021-08-30)

みずほフィナンシャルグループ
https://www.mizuho-fg.co.jp/index.html(参照 2021-08-30)

Caretaker

 
管理人の顔のイラスト SDGs検定合格者証明ロゴ

 Takahiro
 Fujii

気候変動や海洋プラスチック問題に危機感を感じSDGsを知りました。

この度晴れてSDGs検定に合格できたので、このサイトを立ち上げる事といたしました。本業はシステムエンジニアです。

SDGsの内容や個人で取り組めるSDGSについて幅広くお伝えしていきたいと思っています。

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