日本の年間衣類供給量は約40億着、そのうち少なくとも10億着以上は売れ残り廃棄されています。
目次
ファッションとSDGsの関係
衣類は生産時や輸送時のCO2排出量や水の使用量が大きく環境負荷が大きいという点で、SDGsの達成に大きく関わってきます。
環境省によると衣類1着あたりの製造にかかる環境負荷は、CO2排出量では25.5kg(500mlペットボトル約255本)、使用する水は2300リットル(浴槽約11杯)にものぼります。
1着の服を作るには大きな環境負荷が発生している事が分かります。更に 新疆ウイグル自治区 などでは人権を無視した労働が行われている可能性があり、SDGsとは密接に関係している問題を含んでいると言えるでしょう。
着られないまま捨てられる服が10億着以上
ファッションの業界は流行の変化がはやく、売れ残ってしまうとなかなか正規の価格て売る事が難しくなってしまいます。年間約15億着から16億着の売れ残りが発生し、ブランド価値を守るためその多くが破棄されています。
仮に15億着が破棄されているとすると、衣類の廃棄分だけでCO2排出量は3825万トンにのぼり、500mlペットボトル7650万本分にもなります。これは日本の火力発電に伴う年間CO2排出量4.4億トン(環境省「2019年度における地球温暖化対策計画の進捗状況」より)の10分の1に匹敵し、火力発電所1基あたりの年間CO2排出量の40倍にもなります。
水の使用量では、衣類の廃棄分の生産にかかる水使用量は34.5億トンとなり、東京ドーム2782杯分の水が捨てられている計算になります。
ファッション業界の流れを変えられるのは私たち
これまで見てきたような大量廃棄が問題となっているファッション業界ですが、この業界がこのような構造になった背景の一つには私たち「消費者がそれを支持してきたから」と言う側面があります。
私たちは新しいファッションを常に求める傾向(メーカーによって煽られている傾向はありますが)があり、新作のデザインや新しい流行のファッションを好んで選択する傾向があります。一方でこのような消費者の志向によって「売れ残り」生まれます。
売れ残った衣類は需要が低下するため、売る為には価格を下げるなどなにがしかの対応が必要となってきます。しかし、売れ残りの製品を低価格で販売することは新しく・カッコいいファッションを提案するというブランドイメージを毀損しかねませんし、毎年新作を販売して継続的な利益を確保したいアパレルメーカーの意向には反する部分がでてきます。
アパレルメーカーはこのような事態を避ける為に売れ残った未使用商品を値引き販売はせず、破棄するという行動に出ることが多くあります。
ブランドイメージの毀損や新作の販売に売れ残り商品のバーゲンが悪影響を及ぼすことはアパレルメーカーにとっては致命傷となりかねません。したがって、アパレルメーカー自身で現在の業界構造を変革することは難しく、消費者の考え方が変わらなければ、現在のファッション業界の構造変革は難しいと言えるでしょう。しかし、裏を返せば私たちが新しいファッションだけを求めるのではなく、売れ残った商品を廃棄してしまうメーカーに「No」を突き付ける事ができれば、ファッション業界の構造を変えていく事ができるはずです。
未使用衣料品廃棄問題に私たちができる具体的行動とは
未使用衣料品の廃棄を減らしていくためには、私たち消費者の具体的な行動が必要です。
- 廃棄を行っていないアパレルメーカーを選ぶ
- 長く着る事のできる衣類を選ぶ
- 不要な購入をしない
- アウトレットを活用する
- 古着を活用し不要になった衣類はリサイクルやリユースする
といった事を意識した具体的行動を取ることが大事になってきます。未使用衣料品廃棄の問題に取り組んでいるアパレル企業をいくつかご紹介いたします。
バーバリー

イギリスを代表するファッションブランドであり世界中にファンを持つバーバリーは、2018年9月に「売れ残り商品の焼却処分を今後直ちに禁止する」との声明を出しました。
2017年の1年間で42億円もの売れ残り商品を処分していたことが発覚し、BBCをはじめとしたメディアから強い非難を浴びた事が背景にあります。
以来バーバリーは「ReBurberry」プロジェクトを立ち上げ、環境問題や教育問題に取り組み姿勢を明確にしました。
バーバリーは企業コミットメントとして、
- 2022年までにすべての製品を社会的、環境的にプラスの影響をもたらす製品とする
- 2025年までにすべての主要材料を100%追跡可能とする
- 2025年までにナイロンまたはポリエステルが主な素材である製品において、100%認証された再生ナイロン・再生ポリエステルを使用する
- 2025年までに100%認証されたウールを調達する
を掲げています。これらの他にも、イギリスの慈善団体スマートワークと提携し、困窮している女性が仕事の面接に行けるようにスタイリングのアドバイスなども開始しています。
世界的ブランドであるバーバリーが廃棄ゼロを打ち出し、環境や社会への関心を高めている事は他のアパレルブランドへの良い影響も期待でき、こういったブランドを選択していく事がアパレル業界の環境問題を解決していく力になっていきます。
フランスのアパレルブランド

2020年2月10日フランスでは衣類や書籍、家電など非食料品を対象として「資源の循環と廃棄物の削減を目指した循環経済に関する法律」が施行され、世界で初めてアパレルの売れ残り商品の廃棄が禁止されました。フランスでは既に2016年2月に一定規模以上のスーパーマーケットにおける賞味期限切れ食料品の廃棄を禁じる法律が施行されており、それに続く資源廃棄を禁じる法律の施行となりました。
「資源の循環と廃棄物の削減を目指した循環経済に関する法律」 にはサスティナブルファッションへのコミットメントを高める為、2022年1月からメーカーは商品の品質や環境に関する情報を消費者が購入時にアクセスできるように表示しなければならない事も盛り込まれています。
フランス政府の取組みは、廃棄を禁止された各業界企業にサスティナブルな生産・流通構造へと改革を促すものとなり、フランス企業の企業価値を更に向上させる事になるでしょう。
日本で知られているフランスのアパレルブランドは、ルイヴィトンやエルメス、シャネルと言ったハイブランドが多いですが、広告を一切行わずその分の経費をサスティナブル素材の使用や生産にあてているスニーカーメーカー「VEJA」や、商品1点を生産するごとに木を1本植える活動を行っているアウトドア系アパレルの「FAGUO」、流行を追って年2回のコレクションを発表するのではなく、長く着てもらう事を目的にデザイン・生産を行っている「Maison Standards」など以前からサスティナブルファッションを展開しているブランドも多くあります。
来年1月には各ブランドの取組みが可視化されますので、全てのフランスのアパレルブランドには注目です。当サイトでも各企業の対応を追っていきたいと思っています。
日本の未使用衣料品廃棄問題への取組み

日本でも衣料廃棄問題に関する動きは始まっています。環境省とアパレル関連企業11社により2021年夏にも「ファッションと環境に関する企業コンソーシアム(仮称)」が設立されることが決定しました。
この取組みは、目指す目標として
- 家庭からの廃棄を含む衣料ロスゼロ
- 適量供給
- 循環利用の促進
- 環境負荷の把握と削減目標の設定・素材の見直し
を掲げています。
日本ではあまり進んでいない、衣料廃棄ゼロと適量供給を目標にあげている点に期待が持てます。目標の達成には様々な障害を乗り越える必要があると思いますが、日本のアパレル関連企業の環境に対する姿勢の指針となる事を期待してやみません。
現在の参加企業は、アシックス、アダストリア、伊藤忠商事、H&Mジャパン、クラボウ、ゴールドウィン、帝人フロンティア、東レ、豊島、日本環境設計、ユナイテッドアローズとなっています。
この取組みの進捗も随時当サイトでお伝えしていく予定です。
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LFO

LFOは最近多くの報道系メディアで取り上げられている株式会社shoichiが運営する衣料品販売ブランドです。
株式会社shoichiは、全国のアパレルメーカーから売れ残った未使用の衣類を買取り、メーカーの要望によってはメーカータグを外すなどブランドイメージに配慮した方法で再販売を行っています。
取扱いブランドには誰もが知る世界的なアパレルメーカーも含まれており、高品質な品が多く長く愛用できる衣類が揃っています。価格は半額以下の商品がほとんどです。
余った生地や余り糸から作った衣類を販売する「ETHICAL LIFE」やタグや糸まですべてリサイクル素材で作られた衣類を販売する「ETHICAL MARTHA」ブランドも展開されており、衣類の廃棄だけでなく製造時に出る材料の廃棄に関しても削減する姿勢が伺われます。
LFOのような未使用の衣類を買い取る企業が注目されている背景には、アパレル業界からの環境負荷を低減していくためには、アパレルメーカーからの衣料廃棄削減を進めると共に、廃棄される予定であった衣類を再び商品として販売し廃棄量を減らす役割を担う企業が必要だからです。
このような企業から衣類を購入する事は、SDGsにつながっていきます。
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&Bridge(アンドブリッジ)

アンドブリッジは2019年にアパレルメーカーであるワールドと在庫評価や現金化コンサルティングを専門とするゴードン・ブラザーズ・ジャパンが出資して設立したアパレル関連の余剰在庫を販売するオフプライスストアです。
「オフプライスストア」は、アウトレット店舗が自社商品のみを販売するのに対し、メーカーを問わず売残りや在庫商品を販売し、幅広い品揃えを行えるという点でアウトレット販売の1歩進んだ形態として最近注目を集めいています。
これまで先行して出店したオフプライスストアはありましたが、自社以外の商品を集めることに苦戦していました。業界大手のワールドと在庫の専門家である ゴードン・ブラザーズ・ジャパン が手を組んだアンドブリッジは業界でも注目されています。
設立して間がない同社ですが、茨城・埼玉・東京・神奈川・京都のショッピングモールにすでに6店舗を展開しており、広い店内ではジャズが流れ居心地のいい買物空間となっています。
オンライン販売も充実しています。公式オンラインストアでは、ユニセックス、レディース、メンズ、キッズ・ティーン、生活雑貨にカテゴリーされており、自分の欲しい商品を見つけやすい設計になっています。また、商品画面では商品画像がかなり鮮明で商品の質感を確認することができます。ブランド名も確認できますので、安心して購入することができます。価格はほとんどの商品が50%オフ以上で80%以上オフ商品も多数あります。おすすめのオフプライスストアです。
まとめ
今回は、未使用衣料品廃棄が環境に与える影響について見ていきました。
サスティナブルファッションに力を入れているアパレル関連企業にはパタゴニアやGAPなど今回取り上げさせていただい以外にも多数ありますが、情報の正確性を保つ意味で各企業や政府のホームページで未使用衣料品廃棄の対策を行っていることが確認できた事例に限って取り上げさせていただきました。
アパレル業界に関しては衣料廃棄問題だけでなく、製造工程における環境破壊や人権問題など今回取り上げた以外の問題も残されています。
引き続きこれらの問題についても当サイトで取り上げていければと思っています。
いずれの問題も、消費者である私たちの行動によって変革していく事ができる問題です。皆さんの具体的行動のきっかけとなるサイトを目指してこれからも情報発信を続けていきます。
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参考サイト
環境省_サステナブルファッション.
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/ (参照 2021-07-20)
ダイヤモンド・オンライン.「バーバリーの売れ残り廃棄中止が高級ブランド業界を揺るがす理由」.
https://diamond.jp/articles/-/179751 (参照 2021-07-20)
WWDJAPAN. 「フランス、売れ残り品の廃棄禁止へ」.
https://www.wwdjapan.com/articles/850342 (参照 2021-07-26)
Burberry Beyond.
https://jp.burberry.com/burberry-beyond/ (参照 2021-07-20)
株式会社shoichi.
https://shoichi.co.jp (参照 2021-07-20)
ルイ・ヴィトン公式サイト.
https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/homepage (参照 2021-07-27)
【公式】&Bridge(アンドブリッジ).
https://store.world.co.jp/s/brand/and-bridge (参照 2021-07-31)