2021年3月6日。名古屋入国管理局において、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが無くなりました。この事件は、この国の入管の外国人に対する非人道的扱いを改めて世界に知らしめました。今回のブログでは、入管の体制の根幹にあるのは何なのか、そしてどうすれば変える事ができるのかを考えていきたいと思います。

2021年3月6日。名古屋入国管理局において、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが無くなりました。この事件は、この国の入管の外国人に対する非人道的扱いを改めて世界に知らしめました。今回のブログでは、入管の体制の根幹にあるのは何なのか、そしてどうすれば変える事ができるのかを考えていきたいと思います。

目次

  1. 日本の入管で起きている事
  2. ウィシュマ・サンダマリさんの死について
  3. なぜ日本の入管はこれほど非人道的なのか
  4. 日本の入管を変える為には
  5. まとめ

日本の入管で起きている事

入管収容施設
長崎県大村市の収容施設。窓には鉄格子が嵌められている。左奥のボックスはトイレ。
引用元:https://withnews.jp/article/f0161231000qq000000000000000G00110101qq000014503A

出入国在留管理庁(以下入管)が統計を取り始めた2007年以降、入管施設内で17名の外国人の方が死亡し、そのうち5名が自殺とされています。これらの方々はいずれも入管内の外国人収容所に収容され、劣悪な環境に耐えかねて自殺したり、適切な治療を受けられず死に至った人たちです。

入管の収容所は5、6人が雑居する鉄格子のある部屋です。完全に自由は無く、外に出る事は許されず刑務所のような空間です。このような人の自由を奪う行為は世界人権宣言に署名している日本では、よほど正当な理由がない限り認められません。しかし、現在日本の入管が行っている収容は、正当な理由を有しているとは言い難いものです。その根拠となっているのが、全件収容主義というものです。

「全件収容主義」とは、在留資格がない、不法滞在、不法入国といった強制退去の理由を有する外国人は、有無を言わさず収容するというものです。難民申請中であっても、また逃亡の可能性がある・ないに関わらず収容されます。難民申請が認められるには時間がかかります。紛争や迫害で母国を追われ日本を頼ってなんとか逃げてきた人たちも、全件収容主義の上では在留資格を持たない外国人として入管に収容されるのです。これを日本国民に置き換えると、犯罪の程度によらず裁判を経ることなく刑務所に拘留されるようなものです。しかも全て無期限です。日本人にこのような事を警察や検察を行えばとんでもない法律違反ですが、外国人に対しては許されているのです。

そして、収容所での扱いは刑務所以下と言えます。どのような体調不良を訴えても基本的に痛み止めを処方されるだけで十分な治療は提供されません。刑務所では医療刑務所等があり、治療の為の体制が整っていますが、入管ではそのような体制は整っておらず、必要な治療を行っていません。そのため糖尿病など慢性疾患を持つ人は症状がどんどん悪化してしまい、死に至ってしまうのです。40代で糖尿病のため亡くなった方もいらっしゃいます。適切な治療が受けられいれば死に至る事は無かったでしょう。

ここまで書いてきて怒りを覚えてきました。入管での非人道的な扱いはまだまだありますが、これだけでも、いかに理不尽かつ無慈悲で非人道的な扱いを日本が外国人に対してしているか明確だと思います。これらの行為は世界人権宣言やSDGsでは当然禁止されている行為であり、日本は国連から非難されています。しかしそれ以前に、拘束の上死に至らしめるなど、同じ人間が行う行為として許されざる事である事は明白です。どのような理由があるにせよです。このような行為をしておきながら、「世界に貢献する」だの「SDGsを推進する」だの、どの口が言えるのだと憤りを禁じえません。

ウィシュマ・サンダマリさんの死について

ウィシュマさんご遺族の訴え
ウィッシュマ・サンダマリさんのご遺族の訴え
引用元:https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20210831-00256012

2021年3月に名古屋入管の収容施設でウィシュマ・サンダマリさんが亡くなりました。この事件は親族や支援者の方々の努力によって闇に葬られる事なく、大きく報道されました。

国会でも取り上げられ、調査が進むにつれてその非人道性と入管の体質が浮き彫りになっています。

入管は2021年8月にウィシュマさん死亡に関する調査報告書を提出しました。しかし、この事件の核心部分であるウィシュマさんの体調変化から死に至るまでの経緯の詳細は、公表されていません。核心部分に関しては、「別添【1月15日~3月6日までの経過等の詳細】」としてまとめられていますが、出入国在留管理庁のホームページでは「省略」されているのです。核心部分を「省略」してしまっては、報告書を作成した意味がありません。核心部分を隠蔽し、国民や国際社会に事実を知られまいとする意図が強く感じられます。逆を言えば、それだけ外部に知られてはならない行為をしていたのだろうと考える事ができます。

このような入管の姿勢から、この報告書の公表部分にどこまで真実が書かれているのか、私はすべてを信頼する事はできません。しかし、公表されている部分だけでも、死に至る事が十分に予見できた状況である事は読み取る事ができます。

報告書にはウィシュマさんの収容後の体重変化が記載されています。収容開始時点の2020年8月20の体重は84.9kgでしたが、亡くなる直前の2021年2月23日は65.5kg。亡くなられた時の体重は63.4kgと更に痩せています。約半年の間に21.5kgも体重が減っています。これだけ体重が減ってしまっているという事は、健全な栄養状態が担保されていなかったか、心身に異常をきたしている状態であろうことは医師でなくても想像できます。また、死因については最終的には特定は困難としていますが、死亡確認を行った医師や2月15日に行われた尿検査の結果から内臓に疾患が発生していたことは十分に考えられます。少なくとも尿検査では腎機能障害が生じている数値がでており、入管側もこの検査結果は把握していたはずです。しかし、十分な治療は行われませんでした。

1月中旬ごろからウィシュマさんは嘔吐を繰り返すようになり、嘔吐物に血が混じることや血尿などが確認されています。その後各種薬の投与はなされていますが、根本的な症状の改善は見られず症状は悪化していきます。2月23日からはウィシュマさん自身が外部医療機関での診療を求めていますが、入管は認めず体力回復のためのリハビリテーションなどを行っています。私は医師ではありませんが、検査によって腎機能障害が疑われる状態であるにもかかわらず正しい治療を行わず、体力維持の為と称してリハビリテーションを行わせるなど理解不能です。入管は何もしないわけにはいかないので、アリバイ作り的にリハビリテーションを行わせていたのではないかと思います。

結局入管はウィシュマさんの疾患の状態を正確に把握する行動を行っておらず、本人が診療を求めているにも関わらずそれを許しませんでした。結果症状は悪化し続け、その段階でも正しい対応を行うことなく、ウィシュマさんは亡くなります。

国際的には不当とされる理由で拘束し、十分な治療を行わず、死に至らしめる。これは、日本という国による殺人です。

なぜ日本の入管はこれほど非人道的なのか

国連人権理事会は、2020年8月に茨城県の牛久入管で約5年にわたり収容された2名の収容に対し、恣意的拘禁に該当し国際人権規約に違反するとの意見を採択しました。そもそも日本の入管での収容には期限が無く、司法審査を受ける機会も与えられていない事から、牛久入管での事案だけでなく国際人権規約を遵守した制度とは言えません。

昨年国会に提出された入管難民法改正案でも、一定の条件下で収容所外で暮らす事や難民に準じる「補完的保護」の新設などは盛り込まれましたが、収容期限や司法審査は盛り込まれていませんでした。また、難民申請が3回以上の方は送還する事も盛り込まれました。ほとんど難民申請が通らない日本では、国際的には難民と認められる方が認められず何度も難民申請を行う事は多くあります。この法律が成立していれば、迫害や命の危険がある国への送還が多数発生する可能性が高かったでしょう。入管難民改正法案も国連の人権専門家に非難されています。

幸いにしてこの法案は廃案となりましたが、日本の基本的姿勢が変わらない事が浮き彫りになりました。日本の姿勢は「日本にとって入国・滞在を許可するメリットのある外国人以外は、その人の境遇に関わらず入国・滞在を許可しない」というものだと私は考えます。つまり、保護すべき外国人であるか否かよりも、日本にとってメリットのある外国人であるか否かに重きが置かれているように思われるのです。これは、ブローカーや日本の雇用者による搾取や虐待・いじめが問題となっている外国人技能実習制度でも見る事ができます。

こういった姿勢は、私には非常に身勝手な考えに思えます。前述のように国連からも非難されています。日本はなぜこんな身勝手な方針を取り続けているのでしょうか。

その理由として私が思うのは、日本人の関心の無さです。サンダマリさんの事件はご家族や支援者の方のご努力もあり、ある程度報道されました。しかし、牛久入管の事件やサンダマリさん以前に入管で亡くなられた17名の外国人の方については、サンダマリさんの事件ほどは報道されていません。日本という国が正当な理由なく個人を拘束し、死に至らしめているという民主国家としてはあってはならない事例であるにも関わらずです。ほとんどの日本人はその事実を知る事なく生活し、一方では国連らか人道的に問題のある制度を持つ国として非難されているのです。

なぜ報道されなかったのかという点を考えた場合、「報道機関による政府への忖度もしくは政府からの圧力」や「ニュースソースとしてあまり価値がないと考えた」などが考えられます。いずれにせよ政治への無関心や、入管の体質という問題にほとんどの日本人が無関心であるという事が言えると私は思います。

つまり、日本の入管がこれほど非人道的であるのは、国民である私たち自身の責任なのです。

入管を変える為には

入管の制度は絶対に変えなくてはなりません。どう変えるべきであるかは明らかです。全件収容主義を止め、人命と難民保護を第一に考え、必要な医療体制を整え、収容期限や司法審査を受ける機会を設ける事です。SDGsや世界人権宣言に即した制度に変えるべきなのです。

しかし、こんな当たり前の法律に変える事がこの国では簡単ではありません。入管法を変える事ができるのは国会ですが、政治への無関心はもはやこの国の国民性と言えてしまうほど定着してしまっています。だから入管の実態をご存じであれば、恐らく多くの日本人が非難するであろう法律であっても、改善される事なく何十年も運用され続けているのです。

変わるべきは私たちです。

私は、このブログを執筆するにあたり、多くの政府方針や決定の資料を目にしてきましたが、危機を覚えるような決定をいくつか見てきました。それらは、いずれも情報公開はされていても報道で取上げられることは無く、ほとんどの日本人は認識していない事です。政治への無関心が加速すれば、こういった事例は増えていきます。

しかし、政府発表資料をいちいちチェックする事など通常の社会人生活を送っていれば不可能です。こういったブログを記している私でも、SDGs関連以外の資料に目を通す時間はありません。

では、最終的に私たちが取るべき行動は何なのか。それは、少なくとも選挙権を持つ7割以上の方が公約や立候補者、所属政党の考えをきちんと把握したうえで投票に行く事だと思います。日本において投票権は、18歳以上の全ての国民に与えられた社会を変える事の出来る権利です。デモに参加する事も、自身の主張をネットやSNSで発表する必要もありません。いまより多くの人がもう少しだけ投票権を大事に思い、選挙期間中だけでも政治に関心を持てばこの国は変わるのだと、私は思います。

まとめ

ウィシュマ・サンダマリさんはじめ入管で亡くなられた方々の、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、もう少し外国人就労や人権について書いていきたいと思います。

参考サイト

Caretaker

 
管理人の顔のイラスト SDGs検定合格者証明ロゴ

 Takahiro
 Fujii

気候変動や海洋プラスチック問題に危機感を感じSDGsを知りました。

この度晴れてSDGs検定に合格できたので、このサイトを立ち上げる事といたしました。本業はシステムエンジニアです。

SDGsの内容や個人で取り組めるSDGSについて幅広くお伝えしていきたいと思っています。

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