SDGsへの関心が高まっている昨今ですが、世界は良くなっているのでしょうか?SDGs報告2020に沿って見ていきます。
「行動の10年」
SDGsは2015年9月の「国連持続可能な開発サミット」で全国連加盟国193ヶ国の参加を得て採択され、2016年1月1日に発効されました。
2020年から2030年までは「行動の10年」と位置付けられ、いよいよSDGs達成に向けて成果を出していく時期に入ってきました。
その「行動の10年」最初の年、2020年の世界の成果はどうでしょうか?SDGsの進捗報告として国連事務総長により毎年提出される事になっている、「年次SDG進捗報告」の2020年版から17の目標ごとに見ていきましょう。
「1.貧困をなくそう」の現状
17目標の1つ名は「貧困をなくそう」です。SDGsは気候変動対策や海洋保全などのイメージが強いですが、最初の目標は「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」となっています。貧困は犯罪への誘因となり、紛争、飢餓、不平等、教育阻害など多くの世界的問題の根本原因と考えられるからです。
そんな「貧困をなくそう」の進捗状況はと言いますと、芳しくありません。むしろ悪化してしまっています。
SDGs報告2020では、コロナ感染症の影響や自然災害の激甚化により、全世界の貧困者数はこの10年で初めて増加に転じると伝えました。2020年には新たに7100万人の人が極度の貧困(SDGsでは1日1.25ドル未満で生活する人々と定義)へと追いやられると報告書では警告しています。
なお、コロナ感染症の影響がなかったとしても2030年までに貧困を撲滅できないと試算されており、更なる取り組みが必要な事が報告されています。
貧困問題は国連が長年取り組んできた問題で、近年はその効果もあって2010年には世界の15.7%だった貧困の割合がその後順調に減り続け、2019年には8.2%まで減少していました。
それでも、2030年に極度の貧困をゼロにするというSDGs目標には届かない状態であった事に加えて、昨年からのパンデミックと気候変動によって現在の状況は大きく悪化しています。世界的な感染症の流行などの緊急時には、弱い立場に置かれた人々が更なる苦境にみまわれる事が浮き彫りになりました。
日本の貧困問題
貧困の問題は日本では関係があまりないように思われがちですが、日本では近年「相対的貧困」が問題になっています。
相対的貧困とは「世帯所得がその国の可処分所得の中央値の半分に満たない人々」をいい、厚生労働省の発表では2018年の日本の相対的貧困は、15.4%。可処分所得の中央値は約250万円ほどですから、約7人に一人は年間125万円以下の所得しかないという事になります。
貧困問題は「寄付」だけでは解決しない
世界や日本の貧困の撲滅に対して、私達ができる事は何でしょうか?
貧困問題の解決策として真っ先に思い浮かべられるのは、寄付などの直接的な支援です。しかし、SDGsでは寄付を貧困撲滅の方法として取り上げていません。(持続可能な開発のための2030アジェンダには「寄付」という言葉は1度も出てこない)
貧困な状態にある人々が寄付だけを頼りにしていてはいつまでたってもギリギリの生活から抜け出せるようにはならず、その貧困は子や孫の世代にも引き継がれていきます。結果として子や孫の世代まで寄付が無ければ生活できない状態となりかねません。これは「持続可能ではない」と考えられるためです。
一方で既に生命の危機に直面している人々や住むところを負われている人々を窮地から救う為、生命維持に必要な医療を受ける為など寄付でしか救えない状況の人々に対して寄付は非常に重要です。それ自体は行うべき事であり否定されるべき事ではありません。
しかしながら、何もかもが寄付によって解決できると考えるのは間違いであることを2030アジェンダは示しています。それよりも、誰もが自身の持つ潜在能力を発揮でき、誰もが平等に学習機会やチャンスを得る事ができる社会を作っていく事も目指さなければならないとSDGsでは指摘しています。
そんな社会を作っていくために私達一人ひとりがすべきことは、誰もが高騰教育を含めた学習機会を得る事ができ、性別や社会的地位、差別、収入によってチャンスに不平等が生まれる事のない社会を構築していく事だと私は考えます。
近年問題となった大学入試の男女格差などはあってはならない事です。このような問題に関心を持ち、各自のできる範囲で、各自の持続可能な方法で、声を上げ、活動する事が大切です。
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